PROJECT STORY 10

若手技術者が、特高メガソーラーに挑戦

―合同会社ノーバル・ソーラー様 茨城県日立十王町太陽光発電所電気工事―

特別高圧 - 電力関係者は、略して特高(とっこう)と呼ぶ。

7000Vを超える高い電圧のことで、大容量の電力が必要な工場や大型ビルなど、大規模施設で利用される。特高電気工事は通常の工事と異なり、厳しい規制や大型設備の据え付けが必要で高度な技術力が求められる。

パネル数4万9140枚、総出力17,690.4kWのメガソーラー

2018年12月から、翌年9月末まで茨城県日立十王町で約1年かけて実施された工事は、JESCOグループにとって初めての特高メガソーラー工事となった。
規模はパネル4万9140枚、総出力17,690.4kWで、その発電量は一般家庭5000世帯の一日の使用量にあたる。
工事を担当したのは、JESCOエコプラント事業部課長の八島祐介、主幹技師の中島正勝や若手技術者ら4人で、事業部長の和賀井寿雄が全体を統括した。
JESCOグループが担当したのは、約5万枚のパネルから電力を1カ所に集めるための接続箱、集めた電力を一般に使えるように直流から交流に変換する機能を備えた17台のパワーコンディショナ、電力会社の架空線に送電するため昇圧する特高変電設備の設置・調整などの工事。

心臓部のパワーコンディショナ、
特高変電設備機器設置では、ミリ単位の精度が必要

現場代理人を勤めた八島にとって初めての特高メガソーラー工事だったが、工事は八島の指示により大手電力会社で特高工事経験が長かった中島らを中心に進められた。
工事で特に難しかったのは、「発電設備の心臓部ともいえるパワーコンディショナと特高変電設備の設置工事」と八島は話す。今回設置したパワーコンディショナは長さ6m、幅2mの大型機器で、パワーコンディショナや変電設備の設置工事では、装置を安定的に保つためミリ単位の細かな精度が要求される。
そのうえ、機械設備の据え付けは、工事の終了間際に集中するため、「誤差が生じるとスケジュール通り終わらせることができなくなってしまう」(八島)ことから、経験と緻密な工事が必要だ。
八島はパワーコンディショナの仕組みを頭に入れ工事に臨み、ベテラン技術者のアドバイスを受け、協力会社に指示を出しながら慎重に進め、初めての特高メガソーラー工事を無事完工することができた。
八島は工事をこう振り返る。「機械設備が大型で経験を積まないと設置が難しい。中島さんら経験者に負うところが大きかった」。
事業部長の和賀井も「特高工事は特別な技術、経験が必要でベテラン技術者の役割は大きかった」と話す。

 

仕様書や施工書などを熟読し、機器の機能を頭に入れて工事に臨む

太陽光発電工事に関わって約10年が経過する八島が、絶えず念頭に置いているのが、社長の古手川太一のこの言葉だ。「工事は段取りが8割。施工前の段取りの良し悪しで、施工がスムーズにいくかどうか決まってしまう」
八島は今回の工事で、工事の心臓部ともいわれるパワーコンディショナの仕組みを熟知するため、仕様書、施工書、取扱説明書などを熟読し、分からないところはメーカーの担当者に訊ね、設計図を丹念に確認し工事に臨んだ。
工事を無事終えた後、八島は「初めての特高メガソーラーに関われ、無事完工した後の達成感はこれまでにない大きなものだった」と感想を語っている。そして、こう付け加えた。「工事が終わった後、検査が終了するまでは心配でしたが…」

 

現場で実績を積みながら、太陽光発電関連の技術者を育成

わが国では2009年に地球温暖化対策やエネルギーの多様化を図るため、電力会社が一定の価格で太陽光発電の余剰電力を買い取る「固定価格買取制度」(FIT)がスタート、太陽光発電が急速に普及し始めた。
2012年にはFIT制度が改定され、太陽光発電以外の風力、バイオ、地熱などの再生可能エネルギーにも買取制度が適応されたことに加え、2011年の東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故で、再生可能エネルギーの普及の動きが一層強まった。
中でも太陽光発電は、設置場所の制限が少ないことなどから、再生可能エネルギーの切り札的な存在として注目を集めた。
JESCOグループは太陽光発電が本格的に普及する以前から、将来をみすえて太陽光発電工事を手掛けていた。その後、2012年には、エコプラントグループという部署を作り、太陽光発電の建設工事に本格参入した。
当時は、太陽光発電関連の専門技術者がいなかったため、電気や通信部門から人を集め、現場で実績を積みながら、技術を育ててきた。八島はJESCOグループが太陽光発電工事に参入当時、いわば草創期から太陽光発電工事に関わってきた数少ない技術者だ。

 

太陽光発電事業に参入以来、10年で202箇所、262MWの工事実績

JESCOグループが太陽光発電に参入して約10年が経過するが、これまでの工事実績は全国202カ所、総出力262MWに達している。
工事での実績を通してグループでは経験、技術、知見を積み重ね現在では、太陽光発電所工事のコンサルティングから、設計、施工、メンテナンスまでを一貫して提供できる体制を整えている。
同時に、日射量、発電量などをインターネット上で可視化できるシステムを導入し、最適な発電や電力の利用ができるように顧客への提案も行っている。和賀井は、「お客様のあらゆるニーズに対応できるのがJESCOの強み」と力を込める。
JESCOグループの太陽光発電工事への取り組みは、日本経済新聞のNEXT1000に「脱炭素実現を支える新興勢」として取り上げられるなど、高い評価を得ている。

これまでの経験を活かし、福岡県で50MWのメガソーラー工事に臨む

太陽光発電工事の実績を積み重ねてきた八島は、いま福岡県宗像市で日立十王町の設備を大幅に上回る50MWの超大型のメガソーラーの工事に現場代理人として参加、指揮にあたっている。
八島は、「これまで取り組んできた小さな工事の積み重ねが、関連機関との調整、施工、管理などの面で活きている」と話す。
ただ、「太陽光発電の買い取り価格が低下する中で今後、事業用の大型の太陽光発電設備は減少する」(和賀井)ことが予想されている。そこでJESCOグループが最近、力を入れているのが工場や商業施設、大型ビルなどの屋上に設置した自家消費型の太陽光発電だ。
自家消費型の太陽光発電は、余った電気を電力会社の送電線に直接流すことができないため、安全装置の取り付けが必要、さらに自家使用電力が少ないときはパワーコンディショナの出力を制御し、発電量を抑えるなどの工夫も必要になってくる。
そういう意味で、「コンサルティングから、設計、施工、メンテナンスまで一貫した技術、経験を持つJESCOグループの役割はますます広がっていく」と、和賀井は自家消費型の太陽光発電に大きな期待を寄せる。

協力会社を組織化し、太陽光発電工事で全国展開も視野に

JESCOグループは、太陽光発電工事で全国展開も視野に入れている。これまでの電気、通信工事などで連携したことのある全国の協力会社を組織化し、太陽光発電工事の全国展開を目指す。
わが国のエネルギー政策では、再生可能エネルギーの割合を2019年度の18%から、2030年度には36~38%に引き上げることを掲げている。今後、太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの役割は、ますます高まっていくことは間違いない。
JESCOグループは、太陽光発電事業を経営の大きな柱の一つに掲げ、将来は太陽光パネルのリサイクルも含め、太陽光発電のライフサイクルを見据えワンストップで対応できる体制を構築していく方針だ。

(2022年11月掲載)

JESCO株式会社
執行役員常務
エンジニアリング事業本部
環境・エネルギー事業部
事業部長

和賀井 寿雄

WAGAI HISAO

JESCO株式会社
エンジニアリング事業本部
環境・エネルギー事業部
再生エネルギー工事1部
課長

八島 祐介

YASHIMA YUSUKE

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