PROJECT STORY 06

大規模プロジェクトを成功に導いた
3人のチームワーク

―ノイバイ国際空港新築工事の舞台裏―

いよいよ始まったビッグプロジェクト。
異例の綱わたりスケジュールに挑む

ノイバイ国際空港第2旅客ターミナル新築工事は、2012年6月に着工した。

これほどのビッグプロジェクトとなれば、さまざまな事情で遅滞が生じることは日本でも珍しくない。ところがこの案件の工期は、その規模に比べて極めて短い30カ月。さらに、引き渡し翌日には運用が始まるという綱わたりの進行が求められた。

ビル本体の施工が遅れ気味だったこともあり、工期の問題はJESCOグループのメンバーを最後まで悩ますことになる。言うまでもなく、照明器具の設置はビル本体の建築工事が進まなければ始められないからだ。

大規模な建設工事は、「ゼネコン」と呼ばれる総合請負者と各種専門工事業者の複合的な体制で進められる。責任者として外部関係者との交渉・調整に当たったJESCO ASIA社長の中牟田一は、「周囲の事業者から『大丈夫か?』『間に合うのか?』としきりに声をかけられましたよ。間に合わせる自信はありましたが、今振り返ると、本当によく終わったなと感じます」と当時をふり返る。何しろ引き渡しまで残り3カ月の時点で、設置する約2万台の照明器具のうち1万3000台が未設置だったのである。周囲の不安はもっともであった。

豊富な現場経験が支えた施工図作成。
半年先、1年先の進捗を読む

ビル本体工事の遅れは、当然、後に控えている電気工事のスケジュールを圧迫し、まずは施工図の作成に影響する。施工図とは、現場の作業者が実際に用いる図面のことである。同プロジェクトで電気工事の施工図を担当したのは、日本国内で数多くの電気工事を取り仕切ってきたJESCO CNSの落合通彦。現在、海外工事部門のジェネラルマネージャーを務める落合にとっても海外の案件は初めてであり、ましてや、この規模プロジェクトともなると当初は戸惑いの連続であった。

施工図の作成では、スムーズに照明器具を設置するための配線がとりわけ重要となるが、往々にして「配管が収まらない」という事態が発生する。その対応として、サッシの周りなどの迂回ルートを現場で探すのが一般である。しかし、これほど大規模な工事で、さらに遅れが生じている状況では、出来あがってからの対応では到底間に合わない。落合には前段階の工事を担当する会社の進捗を半年先、1年先まで予測しながら施工図を作成するという離れ業が求められた。そこで落合は、工事を監督する設計会社との度重なる交渉に際して数パターンの施工方法を立案する。海外経験が豊富で関係各所からの信頼が厚い中牟田が調整に当たり、こうした局面を何度も乗り越えていった。

また、落合は異国の習慣やコミュニケーションの壁にも直面する。実際に作業をするのはベトナム人を中心とした東南アジアの人々で、中にはヨーロッパ出身の者もいた。そこでは日本人特有の"あ・うんの呼吸"は通用しない。落合は語る。「『日本の常識は世界の非常識』という中牟田さんの言葉に深く頷いたことを覚えています。いかに作業者に動いてもらうかを考えながら作業する重要性を教わりました」。異例の施工図作成の先には、多国籍の現場というさらなる難関が待ち構えていたのである。

現地作業員300人の動員で作業は佳境に。
入社2年目社員の奮闘

そして、いよいよ内装工事が本格化して現場が緊迫してきたころ、中牟田は、現地作業員300人動員という海外事業では異例の決断をする。

もっとも、人手さえ集まれば万事解決とはいかない。多国籍の作業員の適性を見ながらグループ分けと配置を決め、施工図の意味を伝えて正確な作業を促す。作業者の多くは勤勉な国民性で知られるベトナム人とはいえ、これだけの内容を厳密に伝える労力は並大抵ではない。

その取りまとめ役として、引き渡しまで1年となった時期にベトナムに呼ばれたのは、当時入社2年目の胡 又偉(フー ユーウェイ)。

決して経験豊富とはいえない胡だったが、人を動かす能力を見込んで抜擢されたのだった。中牟田いわく「とにかく現場が好き」な胡は、文字通り現場に張り付き、懸命に現地作業員の陣頭指揮に立った。その姿には、プロジェクトに参加する他社の社員からも賞賛の声があがったという。

2014年末、紆余曲折を経ながらも、ノイバイ国際空港第2旅客ターミナルは竣工を迎えた。中牟田は、プロジェクト完遂のカギとして、落合、胡との意思疎通のトライアングルをあげる。このトライアングルが潤滑に機能したからこそ、現地作業員と共にこの難局を乗り越えることができたのであった。

難局を乗り越え、東南アジアのビジネスに大きな一歩。
この実績を自信にさらなるプロジェクトに挑む

引き渡しの翌日、新ターミナルビルのボーディング・ブリッジに到着する一番機を目にしながら、胡は「ああ、いよいよ動き出すのか」と感慨を覚えたという。

日本でもなかなか経験できないビッグプロジェクト、しかもさまざまな難題が山積する海外の案件に関わった経験は大きい。この経験が人材を育て、次の大きな案件に挑戦する布石となると中牟田は感じている。成長著しいアジア新興国では、今後、空港をはじめとする交通インフラの工事は増加することが予想される。知名度の高いノイバイ国際空港の実績はJESCOグループの大きなアピールポイントとなるだろう。

翌2016年には、同プロジェクトが一般社団法人エンジニアリング協会の「エンジニアリング功労者賞」を受賞したという嬉しい知らせが舞い込んだ。JESCOグループでは、こうした外部の評価に自信を深めるとともに、ベトナムの経済発展に貢献しているという誇りを胸に、日々新たなプロジェクトに挑んでいる。

(2017年9月掲載)

JESCO ASIA JSC
代表取締役社長

中牟田 一

HAJIME NAKAMUTA

JESCO CNS株式会社
プロジェクト推進事業部 海外工事部

落合 通彦

OCHIAI MICHIHIKO

JESCO CNS株式会社
プロジェクト推進事業部 海外工事部

胡 又偉

HU YUWAI

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